家族信託の受託者を複数人に設定することは、法的に可能です。複数人の受託者を設定することには、管理する財産を分散できるなどのメリットがありますが、意思決定が難しくなるなどのデメリットも存在します。
受託者を複数人にする背景
家族信託の受託者を複数人にしたいと希望する人は少なくありません。これは、受託者の責任緩和と死亡対策を目的としています。受託者は、委託者から信託財産の管理を任されており、忠実な管理や公平な管理、トラブルが起きないように注意を払う必要があります。これらの負担を1人に背負わせると、責任が重くなるため、受託者を複数人にすることで、1人あたりの責任を減らしたいとの要望があります。
受託者を複数人に分けるメリット
- 管理する財産帳簿や権利を分散できる:分散して管理することで1人あたりの負担が軽減されます。
- 共同受託者同士で監視・相談し合える:単独で信託財産を管理するよりも、誤った使い方を未然に防ぐことができます。
受託者を複数人に分けるデメリット
- 意思決定が遅くなる:意見が割れる可能性があり、想定していた財産管理ができなくなる恐れがあります。
- 信託で発生した債務が共同受託者の連帯債務となる:個別的な事情は考慮されず、受託者全体で意思疎通を図ることが大切です。
- 財産管理に共同受託者の過半数の同意が必要:過半数の同意を得られなければ事務処理はできません。
受託者を複数人にする以外の方法
- 第二受託者を決めておく:受託者の死亡対策として有効です。
- 信託監督人や受益者代理人を設定する:受託者を監視し、管理方法の相談も可能です。
- 信託契約を複数結ぶ:それぞれの受託者と別々に契約を結ぶことで、権利関係がスッキリします。
- 成年後見制度を併用する:委託者が判断能力を失った際に対処しやすくなります。
- 受託者を個人ではなく法人にする:永続的に家族信託を続けられるメリットがあります。
家族信託の受託者を複数人に設定する際は、メリットとデメリットを十分に理解し、適切な判断を行うことが重要です。不明点や不安がある場合は、専門家に相談することをお勧めします。